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コロナ禍における学校の現状と教育のICT化に関する教員アンケート結果

NPO法人エコテクみらい研究所とプラスエムは共同で、「コロナ禍における 学校の現状とICT化に関する教員アンケート調査」を実施しました。
このほどその調査結果がまとまりました。


アンケート調査の目的

NPO法人エコテクみらい研究所とプラスエムは共同で、2021年1月末〜
2月末の期間、「コロナ禍における学校の現状とICT化に関する教員アン
ケート調査」を実施しました。
  • コロナ禍において学校の現状はどのようになっているのか?
  • 急速に進む学校のICT化の中で現在の状況をどのように感じているのか?
この調査を通して、日々子どもたちと向き合う先生方の『本音』を
お聞きするとともに、併せて、企業や団体が行う学校への支援活動に
反映させることも目的の一つと致しました。

【特記点】
1.コロナ禍や日々の忙務の中、さまざまな課題と真摯に向き合う
教員の姿が見える。


2.一斉休校やオンライン授業、感染防止対策など教員の負荷は
極めて大きい。 
→Q2
  • 「教員の負荷が増えた(66%)」。
  • 他方「あまり影響はなかった」との回答はゼロでした。
3.学校教育の中で企業や団体からのさまざまな支援が強く求められている。 
 →Q3〜Q7
  • 「リモートで活用できる教材提供(75%)」、
  • 「リモートで施設(職場)見学または動画提供(48%)」、
  • 「リモートでの講師派遣授業(46%)」、
  • 「実際の講師派遣や施設見学((39%)」
  • ただ、それが実態として一部の先生に限られていないかは気がかりな点。
5.国から十分な支援が受けられない分野で、企業や団体に対する期待感は大きい。
 →Q8
  • 「学習コンテンツの提供(88%)」
  • 「活用方法がわかる資料の提供(63%)」
  • 「授業に使える企業サイト情報の提供(50%)」
  • 「講師派遣(リモート含む)による授業」は45%。
6.無記名での協力のお願いに80%以上の回答者が学校名・氏名を記入した意味とは?
  • それは企業や団体に対する教育支援への期待度の大きさではないでしょうか。
 
  <調査の概要>

○調査対象:全国の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校の教員
○調査方法:全国の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校のうち、
無作為に抽出した3000校にアンケート用紙を郵送、またはメール送信。
回収はFAXまたはメール。
○調査期間   2021年1月末〜2月末
○回答者数   254名(回収率約8.5%)

【特記】
調査は無記名を原則としたが、回答者の87%(221人)が校名・氏名を記載。
*アンケート調査票はこちら(PDF)

  <調査結果から> (※「すべて複数回答可」)

Q1.回答者の学校区分と職位
全体の回答数は254件で、校種別では小学校71校、中学校105校、
高校68校、特別支援学校他10校。
回答者の職位は、「副校長・教頭」(95人)、が最も多く、
以下、「教諭」(85人)、「主幹教諭」(65人)等。

【特記点】
通常、学校を対象としたアンケートでは、「教諭」「主幹教諭」
が主な回答者となりますが、本件に限っては「副校長・教頭」が
最も多く回答を寄せてくれました。
このことから、「主幹教諭」も含め、管理職による学校全体としての、
より信頼性の高い回答をいただくことができたと判断します。

  Q2.昨年は新型コロナ感染拡大により休校の時期があり、
その後も感染防止対策に追われ大変なご苦労があったと思います。
具体的にどのような影響があったでしょうか。


  • 「夏冬の休みが短くなった(82%)」が最も多く、
  • 「運動会などの学校行事が中止になった(74%)」、
  • 「教員の負荷が増えた(66%)」の順でした。
  • ちなみに「あまり影響はなかった」という回答はゼロでした。

【特記点】
選択肢は多岐に渡りますが、どの回答にも共通するのは先生方の負荷が
大きかったことではないかと考えられます。
「その他」の記述に、「ICTに詳しい教員に負担が集中した」という回答が
ありますが、「教員の負荷が増えた」の66%には、自分自身のこととしては
回答しにくい方の姿が見え隠れします。

  Q3.コロナ禍による困難を抱えた学校教育の中で、企業や団体が支援
させていただくとしたらどのようなことを希望されますか?


  • 「リモートで活用できる教材提供(75%)」、
  • 「リモートでの施設(職場)見学または動画の提供(48%)」、
  • 「リモートでの講師派遣授業(46%)」となっていました。
  • 「リモートではなく実際の講師派遣や施設(職場)見学など(39%)」が
  • その後に続いています。

【特記点】
企業や団体に対するニーズとして、リモートを前提とした教材(動画も含む)
提供を求める意見が多い一方、リモートではなく実際の講師派遣や施設(職場)
見学なども求めています。
コロナ禍により、ある程度長期に渡りリモートでの学習を覚悟しているものの、
講師派遣授業への関心の高さにも見られるように、先生方はやはり教育の基本で
ある対面での学習を希望しているようです。

  Q4.文部科学省が推進するGIGAスクール構想の中で、1人1台端末の普及が
始まっています。先生ご自身のお考えをお聞かせください。
1人1台端末を具体的にどのように活用できるとお考えですか?
 

  • 「授業の中で」の活用が93%は当然として、
  • 「自宅に持ち帰らせる」が79%もありました。
  • この設問では、まず1人1台端末を「授業の中だけでの活用」に限るのか
  • 「自宅に持ち帰らせる」のかを問いました。
  • 端末の活用方法として、自宅に持ち帰らせるかどうかで活用の範囲が大きく違ってくるからです。

【特記点】
さまざまなリスクが予想されるにもかかわらず「自宅に持ち帰らせる」が 79%だったことは高く評価できる点でもあり、また具体的にどのような活用
を考えているかという質問にも、たくさん回答が寄せられました。

  • ・授業の中での活用では、「タブレットを活用して意見交換が容易になり、 児童が考える力を伸ばす学習ができる(小学校)」
  • ・「机を離しているので板書が見えにくい。タブレットなどでそれをカバーする(中学)
  • ・「意見発表や集約。確認テストの採点や集計。提出物等で時間を取られなくなる(高校)
  • ・「障害のある子に合わせた形での教材・映像等の提示(特別支援)」など
  • また、
  • ・自宅に持ち帰らせる場合、「宿題のプリント代わりに(多数)」。
  • ・「休校になった場合、リモートでの授業参加(小学校)」 など
  • また、たくさんの活用例のほか、
  • ・「学校管理の場合、破損・紛失があった時に責任がとれないので持ち帰らせるのは難しい(中学校)」
  • ・「紛失・故障の恐れがあるため難しい(高校)」
  • のように、課題を指摘する声もありました。

課題はあるでしょうが、
「それを乗り越えて学習の可能性を広げていきたい」
というご意見も多数ありました。

※Q4のさまざまな活用例は「詳細調査結果」にまとめています。

Q5. 1人1台端末の活用について、企業や団体が支援させていただくと
したらどのようなことを希望されますか?


  • 「学習コンテンツの提供(88%)」
  • 「活用方法がわかる資料の提供(63%)」
  • 「授業に使える企業サイト情報の提供(50%)」と続きます。
  • 「講師派遣(リモート含む)による授業」は45%でした。

【特記点】
Q3では、コロナ禍の困難な状況での企業団体に対する要望をお聞きしましたが、 Q5では1人1台端末の活用についてはどうなのかお聞きしました。
その結果、活用方法がわかる資料、授業に使える企業サイト情報などの提供を求めて いることが分かり、講師派遣などへのニーズが高いことも、Q3と似た結果となりました。

Q6. デジタル教科書やICT機器を活用した授業の促進も
大きな関心となっています。 ICT機器の活用についてお聞かせください。
どのようなICT機器を活用していますか?


  • 「パソコン」「プロジェクター」「無線LAN」「電子黒板」と続きますが、
  • この設問では、学校の備品として何が準備されているかではなく、何を活用
  • しているのかをお聞きしたものです。
  • 選択肢になかった「webカメラ」「書画カメラ」など多彩な機器を
  • 使いこなしている学校も多数あることが分かりました。

【特記点】
学校にはすでに多彩な機器が準備され、先生方がそれを使いこなしている
という状況が分かりました。
ただ、それが実態として一部の先生に限られていないか気にかかります。


Q7. ICT機器を具体的にどのように活用していますか?
Q4では1人1台端末を具体的にどのように活用しているかの質問でしたが、
Q7ではICT機器を具体的にどのように活用しているか、「授業での補助教材として」または「授業以外の学校行事」に分けて質問しました。
その結果、「授業での補助教材として」が93%、
「授業以外の学校行事」が74%となりました。
さらにそれぞれの場合、具体的に事例を挙げていただきました。

【特記点】
ICT機器を具体的にどのように活用しているか極めて多くの具体例を挙げていただきました。
主なものとして、授業での補助教材では、
  • ・「毎時間全クラスで教師間デジタル教科書をプロジェクター提示(小学校)」、
  • ・「普通教室に1台の電子黒板があるので、パソコンとリンクさせて使っています(中学校)」
  • ・「板書代わりに授業内容をプロジェクターで投影。パソコンの画像データをテレビモニターに映すなど(高校)」でした。

  • また、授業以外の学校行事では、
  • ・「オンライン全校集会、オンライン懇談会。お別れ集会のプレゼン(小学校)」
  • ・「パワーポイントでの文化祭発表」
  • ・保護者向け運動会のリアルタイム配信(中学校)」
  • ・「寒い時期の学年集会や、始業式・卒業式等の全校集会(高校)」、
  • などがありました。
※Q7のさまざまな活用例は「詳細調査結果」にまとめています。

  Q8.企業や団体がICT機器や教材の活用について支援させていただくとしたらどのようなことを希望されますか?

Q5では、1人1台端末の活用について、企業団体にどのような支援を希望
するかお聞きしましたが、Q8ではICT機器や教材の活用についての支援に
関する質問です。
  • 「授業に役立つソフトの提供(82%)」、
  • 「活用事例集の提供(67%)」
  • 「アドバイザー・授業サポート要員の派遣(50%)」と続きます。

【特記点】
企業や団体が提供できるソフトや最新情報、またはサポート要員の派遣など
が求められています。
特に、国からの十分な支援が受けられない分野で、企業や団体に対する期待感が
大きいことがうかがわれます。


Q9.自由記述
【特記点】
  • ・「ICTを使いこなすことができれば、子どもたちの学びの質を高められる
    ものもあると思います。新しい機器がどんどん増えることにもちろん不安は
    ありますが、子どもとともに学んでいきたいです(小学校)」
  • ・「セキュリティ面、ネットワークの強化など課題が山積みですが、
    やりながら解決していくしかありません。専門家のノウハウがあれば、
    解決することも多いと感じています(中学校)」
  • ・「教育現場もそうですが、様々な分野においてコロナ禍をいかにして
    乗り越えるか模索中です。多くの知恵を出し合い、新しい対処の方法を探究
    していきましょう(高校)」
など、
日々難しい問題を抱えながらも前向きにとらえている先生方のご意見を
たくさん寄せて頂きました。
困難な時期、お忙しい校務の中でも課題と真摯に向き合う姿勢に心より敬意を表したいと思います。

※Q9「自由記述」にある先生方のナマの声すべてを「詳細調査結果」にまとめました。

< 総 括 >
学校現場は大きな変革期にあります。
特に小学校では、新学習指導要領の中で高学年での英語の教科化、プログラミングやアクティブ・ラーニングが取り入れられたことです。
また、35人学級への移行により新たに教職員1万人以上を確保する必要があります。
新型コロナウイルス感染拡大によってもたらされたさまざまな困難が出現する中、さらにデジタル教科書やICT教材を活用した授業の促進という変革の波がやってきています。

特定非営利活動法人エコテクみらい研究所とプラスエムが行った今回の教員アンケート調査から、この困難な中で、また忙しい校務の中でもさまざまな課題と真摯に向き合う先生方の姿が見えています。 アンケート調査は無記名での協力をお願いしましたが、なんと80%以上の回答者が学校名・氏名を記入してくださったことは何を意味するのか。それは企業や団体に対する教育支援への期待度の大きさではないかと思われます。ソフトや情報の提供、サポート要員の派遣など、国からの十分な支援が受けられない分野で、企業や団体に対する期待感が大きいことが今回改めて浮き彫りとなりました。

教育支援活動については、教育コーディネーターのニーズがますます大きくなっています。これは、文部科学省・教育委員会でも喫緊の課題となっている「教員の労働時間の短縮」に関わりがあります。先生方の働き過ぎは今や“社会問題”とも言えますが、一方で企業や団体の教育支援が、けっしてそれを助長することであってはなりません。 そのためにこそ、先生方の負担軽減に寄与する教育コーディネーターの役割がますます重要となります。

この調査結果を分析し、また機会あるごとに現場の先生方のご意見をお聞きしながら、教育支援を計画する企業や団体のお手伝いができればと考えています。

(文責:非営利活動法人エコテクみらい研究所 事務局長 長岡 稔)

「教育のICT化やコロナ禍における学校の現状について」調査結果

【「詳細調査結果」について】 アンケート結果をさらに詳しくまとめた資料を作成しました。 各問に対する回答の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校別データ、またQ4・Q7・Q9の記述のすべてを紹介した内容です。 閲覧をご希望の場合、1使用目的、2所属(学校名・会社名等)、3役職・氏名を明記し、下記メールアドレスへお申し込みください。
「教育のICT化やコロナ禍における学校の現状に関するアンケート調査」事務局
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