プラスエムは「子どもたちの未来」を考え、
学校や社会、企業や団体をサポートする教育情報企業です。

bg-image bg-image

今、企業に求められている教育支援のあり方とは〜環境教育を事例に考える〜

近年、CSR(社会的責任)活動の一環として学校への出前授業などの教育支援を積極的に行う企業が増えています。また、学校側も企業の持つ専門知識や技術を活かした教育支援を求めています。しかし、学校と企業の交流にはまだ課題もあります。

そこで、全国小中学校環境教育研究会の会長をご経験され現相談役である、新宿区立市谷小学校の高橋康夫校長先生に、企業の教育支援についてお話をお伺いしました。

環境学習には企業の協力が不可欠

(長岡)さて、今年は7月に先進国首脳が地球温暖化防止を話し合った洞爺湖サミットがあり、環境問題に対する社会の関心はますます高まっているといえます。
環境問題が現在だけでなく何よりも末来の問題であることから、今後子どもたちへの環境教育もますます重要になっていくと考えられます。
高橋先生は小中学校の環境教育に大きな影響力をお持ちですが、学校での環境教育の現状をどのようにお考えでしょうか。

高橋 康夫
全国小中学校環境教育研究会相談役
(新宿区立市谷小学校校長)

(高橋)小中学校の環境教育は教科ではないので、主に教科横断型の学習が可能な総合的な学習の時間の中で指導されてきました。その総合的な学習の時間は新しい学習指導要領の中で若干時間が減りますが、環境学習にかける時間が減るということはほとんどないと思います。
地球温暖化防止は子どもも含め現在・未来における人類すべての問題です。低炭素社会の実現に向けて、将来を生きる子どもたちにとってとても重要な学習といえます。

(長岡)環境学習などESD(持続可能な開発のための教育)を進めるには、企業など地域社会の協力が不可欠です。私どもプラスエムでも、毎年12月中旬に開催されますエコプロダクツ展で子ども事務局を運営し、たくさんの学校・子どもたちの環境学習の場としてご活用いただけるよう努力しています。
ところが、現実にはまだまだ企業などの協力を受け入れている学校は少ないようです。実際にはあまり必要とされていないのでしょうか。

(高橋)そんなことはありません。
第一に、先ほど申しましたように、環境学習は教科ではありませんし、学校の教師が専門家というわけでもありません。ですので、それぞれの分野での専門家である方々に講師として来ていただくことは非常に意味のあることです。
また、単に環境問題についての知識を学ぶだけでなく、実際にそれぞれができることを実践されている企業や団体の取り組みを子どもたちに伝えることは、行動へとつなげていく上で非常に重要です。
しかし、実施にまでこぎつけるにはまだ難しさがあるようです。というのも、企業には学校のニーズが見えにくいこともありますが、プログラムの内容が企業目線で組み立てたられていたり、せっかくの支援も学校現場の言葉になっておらずスルーされたり、また教師がよく目にする情報媒体から発信していなかったりすることが多いようです。
あるいは、これは学校側の課題ですが、学校現場には企業的なもの・商業的なものというだけで単純に忌避しようとする傾向がまだまだあるのかも知れません。
更に、単純に忙しすぎるということや企業による教育支援の教育的意義・必要性に気づいていないということもあります。

長岡 稔
株式会社プラスエム代表取締役
(NPO法人エコテクみらい研究所事務局長)

(長岡)企業側の問題でいうと、自社の知識や技術を教育支援に活かしたいという情熱はあっても、学校現場や学習指導要領・教科書などの内容を知らないことから、せっかくの支援が有効に活用されないということもあるようです。
また、出前授業の中で、企業宣伝が色濃く出てしまうケースも見られますし、エコプロダクツ展に出展する企業の場合にも、子どもたちの来場を歓迎するとしながらなかには子どもたちには難しい展示もありますね。
多彩な環境配慮型の製品やサービスなど、日々の授業に大いに活かせるようなせっかくの知識・技術も有効に活用されていないことが残念ながら多いように感じています。

(高橋)そうですね。そのような現状において、長岡さんが行われているような学校と企業の橋渡しは重要だと思っています。
企業の知識・技術を、単に宣伝目的で授業をするのではなく、学校が必要とする教育プログラムに落とし込み、その教育的意義を学校の教師に学校現場の言葉で伝えていただく。非常に多忙な教師の現状からしても、そのような両者のニーズを汲み取りながら適切な言葉で橋渡しをするコーディネーターが重要です。

(長岡)そうしたプレッシャーは感じますが、幸いなことに、学校を通じて子どもたちの環境教育のお手伝いをしたいという企業はどんどん増えているようです。
日本経団連が実施する調査によると、企業の社会貢献活動支出全体に占める教育分野の比率は他分野よりも高く、増加傾向にあるということです。
エコプロダクツ展でも、今年、参加児童生徒数が3年前の2倍以上である2万人を超え、その現状を多くの企業が歓迎してくれています。そのような中で、せっかくの企業の情熱が無駄にならないよう、私どもとしてできることをしていきたいと考えています。

(高橋)子どもたちの環境教育のお手伝いをしたいという企業が増えているとのこと、心強いですね。

企業の教育支援を学校と企業双方にとって有意義なものにするためのポイント

(長岡)ではそのような現状の中で、企業の教育支援を有意義なものにするためにはどうすればよいとお考えですか。

(高橋)先に課題として挙げましたように、一つには教師の側の問題があるかと思います。
企業による教育支援の教育的意義について理解を深めていくとともに、具体的な活用方法などを伝えていく必要があるように思います。
そしてもう一つは企業側の問題です。企業側にはぜひ柔軟な姿勢で学校側のニーズに応じていただきたいということと、またもう少し情報が学校に届くよう努力していただけるとありがたいです。

(長岡)企業側への要望としては具体的にはどのようなことでしょうか?

(高橋)企業が行う教育支援にはふつう、子どもたち向けには、

  • 講師派遣
  • 教材・資料・実験キット提供または貸し出し
  • 工場など施設見学受け入れ
  • イベントへの参加受け入れ
  • 教育イベント(作品募集)

などがありますよね。

教師向けには、

  • 教員対象セミナー・シンポジウムの開催
  • 教材・資料・実験キット提供または貸し出し

などがあります。

そのような多彩なツールを用意していながら、先ほども申しましたように、企業目線で組み立てたツールで教育現場にそぐわなかったり使い勝手が悪かったり、学校現場の言葉になっていないことや教師がよく目にする情報媒体から発信していなかったりというところがあるわけで、それを改善してほしいということです。

(長岡)そうですね、講師派遣授業の中で、企業宣伝が色濃く出てしまうケースも見られますし、またエコプロダクツ展に出展する企業の場合にも、子どもたちの来場を歓迎するとしながらなかには子どもたちには難しい展示もありますね。日々の授業に大いに活かせるようなせっかくの知識・技術も有効に活用されていないことが残念ながら多いように感じています。
有意義な活用方法としては、例えば、近年省エネ効果で話題になっている製品の一つにエコキュートがありますが、ご存知の通りこれは圧縮すると高温になり、膨張させると低温になるという空気の性質を利用したヒートポンプという仕組みで空気の熱でお湯を沸かすという仕組みで成り立っています。これなんかは、小学校4年生の理科の、空気や水などの力・熱・電気の働きとの関係について学ぶ単元の題材としてはもってこいです。この授業の教育効果を考えると、単におもしろくかつインパクトがあるというだけでなく、学校で学ぶ勉強が社会で活かされている具体的な事例の提示であり、勉強への動機付けにもなりますし、キャリア教育にもつながります。

(高橋)そのとおりです。企業が学校に入って授業に貢献するということは、専門知識・技術を子どもたちに伝えていただくとともに、副次的な効果というか、単純に扱っている題材以上の効果も期待できます。
さて、企業の教育支援を有意義なものにするためにはどうすればよいか、ということですが、企業が持つ知識・技術と学校現場の教育的ニーズの両方を知っているコーディネーターが重要だということです。企業の知識・技術を、単に宣伝目的で授業をするのではなく、今長岡さんが話されたエコキュートの事例のように、学校が必要とする教育プログラムに落とし込み、その教育的意義を学校の教師に学校現場の言葉で伝えていただくこと。非常に多忙な教員の現状からしても、やはり間に立ち両者のニーズを汲み取りながら適切な言葉で橋渡しをするコーディネーターが重要だと考えています。

(長岡)私どもが企業側にアピールしていきたいことを的確に代弁していただけましたが(笑)、僭越ながら私どももそのように考えています。
企業は専門知識や技術を持っていますが、当然ですが教育のプロではありません。そして学校の先生は教育のプロですが、現状では先生にとって企業社会は遠く離れたところにあります。そこで私どもが間に入って、企業のニーズと学校現場のニーズを汲み取って、教育的観点からコーディネートさせていただくことが必要なのだと考えています。

企業側のメリット

(長岡)さて、これまで学校側のニーズやメリットを中心に話しを進めてきましたが、企業側も間接的にでも何らかのメリットを求めて教育支援を行っているのが現状のように思いますが、これについてはどのようにお考えですか。

(高橋)教育支援の中で企業がメリットを求めることはあっていいと思います。
子どもは学校だけで育つわけではありません。家庭や企業を含めた地域社会の中で育っていきます。そのことを考えると、企業が教育支援に携わるのは自然なことですし、それを通じて企業のイメージアップにつなげていこうとするのも自然なことだと思います。
しかし、先ほどお話ししましたように、留意していただきたいことがあります。それをするとせっかくの教育支援も不評になり、却ってその企業のイメージダウンになってしまう可能性だってあります。

(長岡)イメージダウンは怖いですね。CSR活動の一環とはいえ、企業が教育支援をするねらいに企業イメージの向上があることは当然なわけで、それがダウンしたのでは元も子もないわけです。

(高橋)ただ、企業側にはその境目が分りにくいかも知れませんね。ですからそういった点でもプラスエムさんのように学校の事情を理解していて、なおかつ企業の事情も分っているコーディネーターが必要なのだと思います。長岡さんは教育に対しお金やエネルギーを使って支援する企業にとって心がけるべきこと、留意すべきことについてどのようにお考えですか。

(長岡)やってはいけないことは宣伝に利用しようとすることです。あくまで教育を支援するという視点が大切なわけでその視点さえ見失わなければ、取り組みの中に子どもたちや学校を巻き込むことになり、それは必ず企業にメリットとして跳ね返ることになります。
学習本位に役に立つことで企業の取り組みが教育的に評価されて広がりを持てること、会社のイメージがあがること、社員のスキルアップやほこりにつながることなどではないでしょうか。その価値は大きいと思います。
今後ますます教育に貢献したいと考える企業は増えると思われます。教育的観点からすると学校もうまく活用していく必要がありそうです。そうである以上、プラスエムの役割はますます重要になりそうです。特に、子どもたちの環境学習は学校だけで完結するものではありません。学校・家庭・地域社会(企業)の協力が大切と思います。

これからも「がんばる先生を応援すること」を理念にプラスエムらしく学校や子どもたちを応援していきます。

今日はありがとうございました。