<アンケートの目的>
NPO法人エコテクみらい研究所とプラスエムでは、2021年1月下旬から2月下旬にかけて、「教育のICT化やコロナ禍における学校の現状に関するアンケート調査」を実施いたしました。この調査は、急速に進む学校ICT化やコロナ禍において学校の現状はどのようになっているのか、日々子どもたちと向き合う先生方は現在の状況をどのように感じておられるのか、その本音をお聞きして企業や団体が行う学校への支援活動に反映させることを目的に実施したものです。

<調査の概要>
○調査対象   全国の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校の教員
○調査方法   全国の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校のうち、無作為に抽出した3000校にアンケート用紙を郵送、またはメール送信。回収はFAXまたはメール。
○調査期間   2021年1月末~2月末
○回答者数   254名(回収率約8.5%)
○調査実施   特定非営利活動法人エコテクみらい研究所、プラスエム

【特記】調査は無記名を原則としたが、回答者の87%(221人)が校名・氏名を記載。
*アンケート調査票はこちら(PDF)教員アンケート調査票

*アンケート調査結果はこちらからご覧いただけます。(PDF)

教育のICT化やコロナ禍における学校の現状に関するアンケート詳細調査結果

 


<調査結果>

※「すべて複数回答可」としました。

Q1.回答者の学校区分と職位
全体の回答数は254件で、校種別では小学校71校、中学校105校、高校68校、特別支援学校他10校。
回答者の職位は、「副校長・教頭」(95人)、が最も多く、以下、「教諭」(85人)、「主幹教諭」(65人)等。

【特記】
通常学校を対象としたアンケートでは、「教諭」「主幹教諭」が主な回答者となりますが、本件に限っては「副校長・教頭」が最も多く回答を寄せてくれました。このことから、「主幹教諭」も含め(160人64%)、管理職による学校全体としての、より信頼性の高い回答をいただくことができたと判断します。


Q2.昨年は新型コロナ感染拡大により休校の時期があり、その後も感染防止対策に追われ大変なご苦労があったと思います。具体的にどのような影響があったでしょうか。

「夏冬の休みが短くなった(209校、82%)」が最も多く、続いて「運動会などの学校行事が中止になった(187校、74%)」、「教員の負荷が増えた(166校、65%)」の順でした。ちなみに「あまり影響はなかった」という回答はゼロでした。

【特記】
選択肢は多岐に渡りますが、どの回答にも共通するのは先生方の負荷が大きかったことではないかと考えられます。「その他」の記述に、「ICTに詳しい教員に負担が集中した」という回答がありますが、「教員の負荷が増えた」の65%には、自分自身のこととしては回答しにくい方の姿が見え隠れします。


Q3.コロナ禍による困難を抱えた学校教育の中で、企業団体が支援させていただくとしたらどのようなことを希望されますか?

「リモートで活用できる教材提供(190校、75%)」、「リモートでの施設(職場)見学または動画の提供(122校、48%)」、「リモートでの講師派遣授業(119校、46%)」となっていました。「リモートではなく実際の講師派遣や施設(職場)見学など(99校、39%)」、「作品募集など学習成果発表の場(92校、36%)」がその後に続いています。

【特記】
企業団体に対するニーズとして、リモートを前提とした教材(動画も含む)提供を求める意見が多い一方、リモートではなく実際の講師派遣や施設(職場)見学なども求めています。コロナ禍により、ある程度長期に渡りリモートでの学習を覚悟するものの、先生方はやはり教育の基本である対面での学習を希望しているようです。プラスエムに関わりのある講師派遣授業への関心の高さにも注目しました。


Q4.文部科学省が推進するGIGAスクール構想の中で、1人1台端末の普及が始まっています。先生ご自身のお考えをお聞かせください。1人1台端末を具体的にどのように活用できるとお考えですか?

「授業の中で」の活用が(235校、93%)は当然として、「自宅に持ち帰らせる」が(201校、79%)もありました。この設問では、まず1人1台端末を「授業の中だけでの活用」に限るのか「自宅に持ち帰らせる」のかを問いました。端末の活用方法として、自宅に持ち帰らせるかどうかで活用の範囲が大きく違ってくるからです。

【特記】
さまざまなリスクが予想されるにもかかわらず「自宅に持ち帰らせる」が(201校、79%)だったことは注目に値すると思います。具体的な活用例も大変たくさん寄せられました。
例えば、授業の中での活用では、「タブレットを活用して意見交換が容易になり、児童が考える力を伸ばす学習ができる(小学校)」、「机を離しているので板書が見えにくい。タブレットなどでそれをカバーする(中学校)」、「意見発表や集約。確認テストの採点や集計。提出物等で時間を取られなくなる(高校)」、「障害のある子に合わせた形での教材・映像等の提示(特別支援)」などです。
また、自宅に持ち帰らせる場合、「宿題のプリント代わりに(多数)」。「休校になった場合、リモートでの授業参加(小学校)」など、たくさんの活用例のほか、「学校管理の場合、破損・紛失があった時に責任がとれないので持ち帰らせるのは難しい(中学校)」、「紛失・故障の恐れがあるため難しい(高校)」のように、課題を指摘する声もありました。課題はあるでしょうが、それを乗り越えて学習の可能性を広げていきたいというご意見も多数ありました。
※Q4のさまざまな活用例は「詳細調査結果」にまとめています。


Q5. 1人1台端末の活用について、企業団体が支援させていただくとしたらどのようなことを希望されますか?

「学習コンテンツの提供(223校、88%)」「活用方法がわかる資料の提供(160校、63%)」「授業に使える企業サイト情報の提供(127校、50%)」と続きます。「講師派遣(リモート含む)による授業」は(115校、45%)でした。

【特記】
Q3では、コロナ禍の困難な状況での企業団体に対する要望をお聞きしましたが、Q5では1人1台端末の活用についてはどうなのかお聞きしました。その結果、活用方法がわかる資料、授業に使える企業サイト情報などの提供を求めていることが分かり、プラスエムの事業でもある講師派遣などへのニーズが高いことも、Q3と似た結果となりました。


Q6. デジタル教科書やICT機器を活用した授業の促進も大きな関心となっています。 ICT機器の活用についてお聞かせください。どのようなICT機器を活用していますか?

「パソコン」「プロジェクター」「無線LAN」「電子黒板」と続きますが、この設問では、学校の備品として何が準備されているかではなく、何を活用しているのかをお聞きしたものです。選択肢になかった「webカメラ」「書画カメラ」など多彩な機器を使いこなしていることが分かりました。

【特記】
学校にはすでに多彩な機器が準備され、先生方がそれを使いこなしているという状況が分かりました。ただ、それが実態として一部の先生に限られていないか気にかかります。プラスエムが講師派遣授業などで関わる多くの学校でそのようなケースが多々あるからです。
※Q6のICT機器を活用の実態についても「詳細調査結果」の記述からうかがえます。


Q7. ICT機器を具体的にどのように活用していますか?

Q4では1人1台端末を具体的にどのように活用しているかの質問でしたが、Q7ではICT機器を具体的にどのように活用しているか?「授業での補助教材として」または「授業以外の学校行事」に分けて質問しました。その結果、「授業での補助教材として」が(235校、93%)とほとんどの学校が、また「授業以外の学校行事」でも(189校、74%)となりました。さらにそれぞれの場合、具体的に事例を挙げていただきました。

【特記】
ICT機器を具体的にどのように活用しているかの非常にたくさんの具体例を挙げていただきました。主なものとして、授業での補助教材では、「毎時間全クラスで教師間デジタル教科書をプロジェクター提示(小学校)」、「普通教室に1台の電子黒板があるので、パソコンとリンクさせて使っています(中学校)」、「板書代わりに授業内容をプロジェクターで投影。パソコンの画像データをテレビモニターに映すなど(高校)」でした。
また、授業以外の学校行事では「オンライン全校集会、オンライン懇談会。お別れ集会のプレゼン(小学校)」、「パワーポイントでの文化祭発表、保護者向け運動会のリアルタイム配信(中学校)」、「寒い時期の学年集会や、始業式・卒業式等の全校集会(高校))などがありました。

※Q7のさまざまな活用例は「詳細調査結果」にまとめています。


Q8.企業団体がICT機器や教材の活用について支援させていただくとしたらどのようなことを希望されますか?

Q5では、1人1台端末の活用について、企業団体にどのような支援を希望するかお聞きしましたが、Q8ではICT機器や教材の活用についての支援に関する質問です。
「授業に役立つソフトの提供(208校、82%)」、「活用事例集の提供(170校、67%)」、「アドバイザー・授業サポート要員の派遣(127校、50%)」と続きます。

【特記】
企業団体が提供できるソフトや最新情報、またはサポート要員の派遣などが求められています。特に、国からの十分な支援が受けられない分野で、企業団体に対する期待感が大きいことがうかがわれます。


Q9.自由記述
【特記】
「ICTを使いこなすことができれば、子どもたちの学びの質を高められるものもあると思います。新しい機器がどんどん増えることにもちろん不安はありますが、子どもとともに学んでいきたいです(小学校)」、「セキュリティ面、ネットワークの強化など課題が山積みですが、やりながら解決していくしかありません。専門家のノウハウがあれば、解決することも多いと感じています(中学校)」、「教育現場もそうですが、様々な分野においてコロナ禍をいかにして乗り越えるか模索中です。多くの知恵を出し合い、新しい対処の方法を探究していきましょう(高校)」など、むずかしい問題を抱えながらも前向きにとらえている先生方のご意見をたくさん拝見しました。
※Q9「自由記述」にある先生方のナマの声すべてを「詳細調査結果」にまとめました。

 


< 総 括 >

プラスエムが実施する調査では、ふだんからプラスエムと関わりの深い先生方(ネットワークの先生方)を対象としていましたが、今回は全国から無作為に抽出した学校を対象としました。その結果、より学校全体の実態を反映した回答が得られたものと思います。

学校現場は大きな変革期にあります。特に小学校では、新学習指導要領の中で高学年での英語の教科化、プログラミングやアクティブ・ラーニングが取り入れられたことです。また、35人学級への移行により新たに教職員1万人以上を確保する必要があります。

さらに、新型コロナウイルス感染拡大によってもたらされたさまざまな困難。そこに、デジタル教科書やICT教材を活用した授業の促進という変革の波がやってきたわけです。
そんな中、特定非営利活動法人エコテクみらい研究所とプラスエムが行った「教育のICT化やコロナ禍における学校の現状について」のアンケート調査では、困難な時期、お忙しい校務の中でもさまざまな課題と真摯に向き合う先生方の姿を拝見しました。

アンケート調査は無記名での協力をお願いしましたが、なんと87%もの回答者が学校名・氏名を記入してくれたことは何を意味するのか。それは企業団体に対する教育支援への期待度の大きさではないかと思います。ソフトや情報の提供、サポート要員の派遣など、国からの十分な支援が受けられない分野で、企業団体に対する期待感が大きいことが改めて浮き彫りとなりました。

教育支援活動については、教育コーディネーターのニーズがますます大きくなっています。これは、文部科学省・教育委員会でも喫緊の課題となっている「教員の労働時間の短縮」に関わりがあります。先生方の働き過ぎは今や“社会問題”とも言えますが、企業団体の教育支援が、それを助長することがあってはなりません。
そのためにこそ、先生方の負担軽減に寄与する教育コーディネーターの役割がますます重要となります。この調査結果を分析し、また機会あるごとに現場の先生方のご意見をお聞きしながら、教育支援を計画する企業団体のお手伝いができればと考えます。

最後に、アンケート調査にご協力いただいた先生方に深く感謝を申し上げるとともに、心より敬意を表します。

(文責:プラスエム 長岡 稔)

*アンケート調査結果はこちらからご覧いただけます。(PDF)

教育のICT化やコロナ禍における学校の現状に関するアンケート詳細調査結果


 

<アンケートの目的>

プラスエムでは、2019年5月下旬から6月下旬にかけて、「企業・団体による教育支援活動に関する教員対象アンケート調査」を実施いたしました。この調査は、企業・団体等が実施している学校教育への支援活動の受け入れ状況と学校現場の認識等についての傾向を把握し、今後の事業展開に反映させることを目的に実施したものです。プラスエムでは、同調査を2014年にも実施しており、傾向の変化を把握することも目的の一つとしました。

 

<調査の概要>

○調査対象   全国の小学校・中学校・高校の教員

○調査方法   プラスエムと関わりのある先生を中心にアンケート用紙を持参・郵送・メール送信

○調査期間   2019年5月末~6月末

○回答者数   104名(調査依頼数は約200名)

*アンケート調査票はこちら(PDF)

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<調査結果>

Q1.回答者の学校区分と職位

全体の回答数は104件で、学校段階別では小学校45校、中学校31校、高校23校、中等教育学校他5校。

回答者の職位としては、「教諭」(52人)が最も多く、以下、「副校長・教頭」(26人)、「主幹教諭」(24人)等。

 

Q2.外部機関による学校教育支援活動で受け入れたことがあるもの(2018年度・2019年度)

「コンクール・コンテストへの参加」が最も多く(78校)、以下「講師派遣による出張授業」を受け入れたことがある学校(73校)、「各種副教材の活用」(41校)、「施設見学」(30校)等となっています。

学校段階別にみると、小学校では「講師派遣による出張授業」と「コンクール・コンテストへの参加」 を、中学校と高校では「職場体験・インターンシップ」を受け入れた学校が比較的多くなっています。

「その他」では大学生チューター派遣、漁師体験、オリパラ教育、電池教室、福祉体験など。

 

Q3-1.企業・業界団体が行う「出張授業」の受け入れ状況(2018年度・2019年度)

回答のあった学校の73%で企業・業界団体が行う出張授業を受け入れており、特に小学校でその割合が高くなっています。

 

Q3-2.出張授業のテーマとしては、「環境教育」が最も多く(73校)、以下、「キャリア教育」(59校)、「エネルギー教育」(32校)、「健康教育」(28校)等となっています。学校段階別にみると、小学校では「環境教育」が、高校では「キャリア教育」の割合が比較的多くなっています。その他のテーマとして挙げられたのは、福祉、地域の伝統・文化、国際理解、科学技術、人間と社会、キャリアセミナー、伝統文化、税について、文化(狂言)、ストック、SDGsなどでした。

出張授業を実施した時間・教科としては、「総合的な学習の時間」を利用するケースが各学校段階を通じて最も多くなっています(88校)。ほか、保健体育(27校)、理科(31校)など。

「その他」では、部活動、道徳の時間、人間と社会、図工、LHR、土曜授業など。

 

Q3-3.企業・業界団体が行う「出張授業」に対する評価

これまでに受け入れた企業・業界団体が行う出張授業を「今後も受け入れたい」と評価している学校は90校であり、86%となっています。

 

Q3-4.5.一方、企業・業界団体が行う出張授業を「受け入れたくない、受け入れるつもりはない」学校(14校)にその理由を聞いたところ、「授業時数に余裕がない」が75%と最も多く、続いて「テーマが年間指導計画に合っていない」が46%であり、「特定の企業・団体との連携に抵抗がある」を挙げた学校は14%と少数でした。

 

Q4-1.企業・業界団体が行う「児童・生徒向けコンクール」に対する認識

企業・業界団体が行う「児童・生徒向けコンクール」に関する情報の周知方法としては、「積極的に奨励している」学校が最も多く69校、「届いたコンクール情報を精選して周知する」学校が65校、「届いたコンクール情報を全て周知」する学校は比較的少なく12%でした。

 

Q4-2.コンクールを「積極的に奨励していない」学校に、その理由を尋ねたところ、「時間的余裕がない」が7校と最も多い回答でした。

 

Q4-3.コンクールを児童・生徒に薦める際に重視するポイント

コンクールを児童・生徒に薦める際に重視するポイントとしては「賞品・参加賞の有無」を挙げる学校が90校と圧倒的に多い結果になりました。学校段階別にみると、「賞品・参加賞の有無」は特に小学校で多いことがわかりました。続いて「教育方針との整合性」を挙げる学校が48校でした。

 

Q5.企業・業界団体が行う教育支援活動を学校で効果的に活用するためのポイント

「学校・企業の双方に精通した専門コーディネーターによる調整を挙げる学校が最も多く(71校)、以下、「宣伝色を出さないよう事前の打ち合わせによる合意」49校、「年間指導計画における位置づけの明確化」が35校、「支援内容・特色等に関するわかりやすい情報提供」(30校)等となっています。

学校段階別にみると、「学校・企業の双方に精通した専門コーディネーターによる調整」は全校種で多く、特に高校で「支援内容・特色等に関するわかりやすい情報提供」と「宣伝色を出さないよう事前の打ち合わせによる合意」が多くありました。

 

Q6 自由記述

・企業団体による教育支援活動は今後ますますニーズが高まります。例えば様々な企業で取り組むSDGsの内容は総合的な探究の時間で、扱いたいもののひとつです。

・作品募集には積極的に参加したいと考えていますが、夏休みや冬休み前に締切りになるものがあります。子どもたちにチャレンジさせるには夏休みや冬休みがいちばん良いように思います。

・企業団体に、講師派遣授業に協力してもらいたいのですが、本校の条件に合うものがなかなか見つからない。企業団体本位ではなく、学校本位に考えてもらえると助かります。

・教員はいつも忙しいので、講師派遣授業は大歓迎だが、教員の負担にならないよう運営に工夫していただきたい(※校長)

・いつも良い情報、良い教材などをご提供いただきありがとうございます。講師派遣授業について、テーマ別に外部講師一覧のようなものがあればよいと思います。

・企業団体による教育支援活動の上手な受け入れについて、教員向けの研修会やセミナーなどを開催できないか。たくさんの先生方が集まると思う。

・コンクールでは、参加賞があるものを児童に薦めます。“○○がもらえるよ”という呼びかけがいちばん効果的です。それと賞の数が多く、入賞のチャンスが多そうなものを要望します。

・健康教育や防災教育に関する教育支援をしていただけたらありがたい。

・副教材を編集する際、または出前授業のプログラム作りの際には、学習指導要領の内容を踏まえるようにしてもらいたい。また現場の教員の意見をリサーチすれば、より使いやすいものができると思う。

・学校が企業団体からの講師派遣に期待することは、「子どもたちに、多面的・多角的な見方や考え方を身に着けさせたい」というところにあります。その意味でも、子どもたちの心を揺さぶるような、リアルな体験などを伝えてほしいと思います。

・出張授業では、教師ではできない実社会で働く人の声を伝えてほしいとお願いしています。学校での勉強・活動と実際の仕事のつながりや、海外赴任体験など、自分の今が未来につながることを意識させるようなお話を聞けるのは、大変貴重な機会だと感じています。

・ポートフォリオ作成にあたり、興味のあるコンテストに主体的に取り組むよう指導しています。

 

< 総 括 >

5年ぶりの調査でしたが、協力してくれた先生は104人でした。小学校・中学校・高校とバランスも取れていました。人数が増えた分、5年前とはかなり違う結果が出るかも知れないと予測しましたが、基本的には同じ傾向でした。

プラスエムが実施する調査では、ふだんからプラスエムと関わりの深い先生方(ネットワークの先生方)に偏る傾向があるので、そのせいかもしれません。しかし、プラスエムと関わりの深い先生方は、ふだんから企業団体の教育支援について関心をお持ちであり、“やる気のある”先生方と言い換えることができます。そのため、調査結果から、“やる気のある”先生方の意識はどのようなものなのかを窺い知ることができます。

教育支援活動については、教育コーディネーターのニーズが、5年前に比べてますます大きくなっていることがわかります。これは、文部科学省・教育委員会でも喫緊の課題となっている「教員の労働時間の短縮」に関わりがあるようです。

先生方の働き過ぎは今や“社会問題”とも言えますが、企業団体の教育支援が、それを助長することがあってはなりません。そこで注目されるのが、先生方の負担軽減に寄与する教育コーディネーターの役割というわけです。プラスエムの責任がますます重くなります。

この調査結果を分析し、また機会あるごとに現場の先生方のご意見をお聞きしながら、学校を通しての教育支援を計画する企業団体のお手伝いができればと考えます。

 

*アンケート調査結果はこちら(PDF)


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2020年から、いよいよ小学校でプログラミング教育が必修化されます。私たちの生活がどんどんデジタル化する中、またAIなどの新たな技術が生まれる中で子どもたちの教育がそれに見合って変わって行くのは当然のことです。しかしスマホもろくに使いこなせない私の感覚では、そうでなくても忙しい小学校の先生に、対応する余力があるか心配です。

文部科学省もさまざまな支援策を打ち出しているようです。そもそもプログラミング教育は広く産業界とも関わりがありますから、文部科学省だけではなく社会全体で協力する必要があります。そこで設立されたのが、文部科学省、総務省、経済産業省が連携した「未来の学びコンソーシアム」です。

これは、プログラミング教育が効果的に実施されるよう社会全体でバックアップしようという趣旨で設立されたものです。学校関係者や教育関連組織をはじめ、IT関連の企業・ベンチャー企業などの産業界と連携して、『多様かつ優れたプログラミング教材の開発や企業等の協力による体験的プログラミング活動の実施等、学校におけるプログラミング教育』の普及・推進のために協力していきます。

2020年から実施される小学校の新学習指導要領では、以下2つの学習活動が定められています。
ア 児童がコンピュータで文字を入力するなどの学習の基盤として必要となる情報手段の基本的な操作を習得するための学習活動
イ 児童がプログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動
しかし、プログラミング教育についての具体的な学年・授業内容に関しては、明確に「この内容」と決められているわけではありません。それぞれの学校である程度、自由に実施することになっています。「これをする」と決まっていないので、ITに詳しくない先生や保護者にとっては不安になるかもしれませんね。
先行実施されている、プログラミング教育の授業実践事例では、そのほとんどが企業の協力によるものです。授業は、理科や社会などの教科ではなく“総合的な学習の時間”の中で行われることが多いようです。こうした事例を見て行くと、現実的には《企業・団体の支援》が極めて重要なのではないかと感じます。

企業・団体にとっても、《本当に求められる支援のチャンス》として、今こそ出番ではないでしょうか。

ということは、“学校と企業・団体のジョイント役”であるプラスエムの出番でもあります。私たちの生活がどんどんデジタル化し、AIなどの新技術が生まれる中、10年後の世界すら見通すことは困難です。プログラミング教育は多数の国ですでに実施されています。そうした中、日本の子どもたちにもプログラミング教育は必要不可欠です。“日本の子どもたち、世界に負けるな!” プラスエムは、小学校でのプログラミング教育を、企業・団体と共に応援します。

校長室の壁に必ず飾られているのが歴代校長の写真です。現在の学校制度の基本は明治政府によって作られましたので、明治初年の創立から150年くらいの歴史を持つ学校も少なくありません。その場合、カイゼル髭の初代校長から何十人もの写真が飾られている学校もあるかもしれません。

そんな歴代校長の写真とともに飾られているのがPTA会長の写真です。PTAは戦後作られた組織で、長くて70年程度。写真も多くて30枚程度でしょうか。

PTAの役割は、児童・生徒の親と教員が協力して教育効果の向上をはかること。戦後GHQの指導のもとに各学校におかれました。全国的組織として「日本 PTA全国協議会」 と「全国高等学校 PTA協議会」が結成されて、現在に至っています。

子どもが入学すると、保護者の間から役員の選出が行われます。子どもを持つ親なら誰でも経験があると思いますが、役員の選出に当たって一苦労があります。仕事を持つ父親に代わって、たいてい母親が対象になりますが、誰もが敬遠するからです。

特に現代では、仕事を持つ母親が普通であり、仮に役員に選出されたとしても、満足に役割を果たせないというケースも多いようです。なり手がなく、くじ引きで決めるという学校もあるほどで、貧乏くじを引いた人に十分な活動ができるわけもありません。

そこに登場したのが“おやじの会”です。“おやじの会”は活動が下火になっているPTAの受け皿として登場し、特に子どもたちの“安全面での見守り隊”“学校行事でのサポーター”として自然発生的に、全国各地の学校に拡がっていきました。

やがて、特に小学校においてなくてはならない存在として、2004年、全国組織「おやじ日本」が結成されました。結成大会に出席した私の会員番号は№00100です。結成の中心となったのは、元東京都副知事の竹花豊氏。元警察官僚だった竹花氏は、子どもたちの健全育成に熱い思いを抱く方で、私はその創立スピーチに感動しました。

その後「おやじ日本」は、公益の増進に資するものであるとして、特定非営利活動法人の認定を受け、各地のおやじの会を支援しています。また、子どもに関する情報提供や様々な活動を通して、子どもたちの健やかな成長に貢献しています。

さらに、平成24年から「未来教室」を学校に届ける活動にも力を入れています。毎年50ほどの小・中学校に、様々な業種の企業で働く若者を派遣し、出前授業を行うのです。学校の先生では話せない社会の現実、その面白さや苦労などを子どもたちに聞いてもらうことがねらいです。

子どもたちの教育は学校だけに任せておいてよいものではありません。家族をはじめ地域社会が寄ってたかって応援することは当たり前です。その意味で、自然発生的に生れた「おやじの会」は、今後ますます存在感を増すでしょう。校長室の壁に歴代校長の写真とともに、「おやじの会」会長の写真が飾られる日もそう遠くないかもしれません。

 

 

 

新学習指導要領の全面的な実施は、小学校は2020年4月から、中学校は2021年4月からとなります。

 ◆小学校 「年間授業時間数」  ※1単位時間は45分

「旧」学習指導要綱

旧学習指導要綱

矢印

2020年4月から全面実施
「新」学習指導要綱

新学習指導要綱

 

  • 3・4学年は「外国語活動」が新たに加わり、35単位時間増加。
  • 5・6学年は「外国語活動」の35単位時間がなくなり、「外国語科」の授業時数が70単位時間増加となる。
  • 総授業時間は、3~6学年で35単位時間数ずつ増加。

 

◆中学校 「年間授業時間数 」  ※1単位時間は50分

中学校は2021年4月から適用 (授業時間数の変更はなし)

中学 新学習指導要綱

 

 

 

幼稚園に送りつけられた、幼児(母親)向け教育冊子(+商品見本)を、園長先生に見せていただいたことがあります。企業からの依頼で、発送元は広告代理店のようです。園長先生によると、園児数の2倍くらい、段ボール箱に詰めてドーンと送りつけられたもので、配ることもできないし、かといって捨てるにもお金がかかるのでとても困っているとのことでした。

お願い状には、「園児の健康に気を配るお母さん方にとって喜ばれる情報が満載」であること、全員にぜひ配布してほしいこと、足りない場合追加でお送りすることなどが書かれていて、“サンプリング”という言葉が何回も出てきたことに違和感を覚えたと言います。大切な子どもたちを預かる幼稚園が、企業の宣伝に利用されたのでは怒るのも当然のことです。

そもそも、教育現場に“サンプリング”という言葉はありません。企業側からは、“サンプリングのお願い”なのかもしれませんが、そこを工夫することが必要です。例えば、サンプリングを “プレゼント”と言い換えたらいかがでしょう。同じことなのですが、これなら違和感はぐっと少なくなります。このような工夫をすることが、教育現場への情報発信を成功させる秘訣です。

“サンプリング商品は無料です!”と、勝手に送りつけたものが配ってもらえるほど教育現場は甘くありません。ところが、同じ内容であっても、例えば「入園のお祝いとしてプレゼントです!」とし、配布の可否を確認してからお届けしたなら、高い確率で配布していただけるでしょう。また、次回からも協力を得られることでしょう。

プラスエムが関わる“サンプリング”は、幼稚園や学校の事情よく理解したうえで、教育現場に最も歓迎される方法で実施します。サンプリングを含む企業の情報発信は、1回だけ成功すればよいというものではないはずです。取り組みの一つひとつから、深い信頼関係を築くことが大切です。そうすれば次回からも必ず協力が得られます。

圧倒的に数が多い私立幼稚園では、公立幼稚園のように園長先生の転勤がありません。一度信頼関係が結ばれれば、長期間継続されます。また、私立幼稚園の場合、地域に絶大な影響力を持つ有力園長先生が存在するケースが多くあります。

プラスエムでは、そうした有力園長との太いパイプを持っていますので、幼稚園を巻き込む必要がある案件では、各地の有力園長に企画の段階から相談します。自分の意見が多少なりとも反映された取組であれば、協力せざるを得ないという状況を作るのです。そうすることが、単発に終わることなく、さまざまな事案を成功させる秘訣と考えるからです。

プラスエムが運営するコンテストでは、学校を対象とした賞の受賞校や上位入賞者の在籍校を訪問して、全校児童・生徒が集合する朝礼などの機会を利用して表彰式を実施することがあります。

本来、朝礼や全校集会は学校独自の行事であり、校外の諸機関が関わることのできないものですが、事務局運営に当たるプラスエムが事前に学校側と協議することで実現が可能になります。主催者が学校を訪問して授与式を行うことは学校にとっても名誉なことであり、節度ある対応ができれば歓迎されないはずがありません。

特に、訪問が困難なへき地校(※)では町を挙げての熱烈な歓迎を受けることがあります。一企業が実施するコンテストであるにも関わらず、過去には町長や教育長が来賓として出席するケースもありました。そんな場合、地元メディアが取材に入り、大きなニュースになったりして主催者を感激させることになります。同行するプラスエムの担当者も仕事冥利に尽きます。

朝礼というのはその名の通り早朝に行われます。だいたい8:00~8:30というケースが多く、主催者及びプラスエム担当者の学校集合は7:30~8:00という時間帯になります。そのため前泊になりますが、その地の名産品や銘酒と出会うという楽しみもあります。

アクシデントに見舞われることもあります。急な天候の悪化などの理由で、当日の朝、宿泊先に休校の連絡が入ったりします。インフルエンザが流行している季節では、急きょ校内テレビ放送での表彰式に切り替えられたりします。授与式では主催者が祝辞を述べることになりますが、ふだん慣れている大人相手のスピーチと違って、子どもたちを前にすると戸惑うと言います。まして、急きょテレビカメラを前にすると、慣れないこととはいえ一層緊張するようです。

せっかくの学校訪問ですから、この機会を利用して主催者が持っているプログラムを使っての講師派遣授業を実施させていただくケースもあります。東京から遠路はるばるやってきた人が講師となって行われる授業に、子どもたちだけではなく先生方も感激してくれます。

こうした取り組みの一切は、事務局運営に当たるプラスエム担当者が事前に学校側と綿密に調整して行います。校長はじめ担当の先生方とは当日はじめてお目にかかるわけですが、名刺交換しながらも旧知の間柄のような感覚で主催者を紹介することになります。

主催者を案内して入る玄関に立て看板が出ていて、そこに「プラスエム長岡様、お待ちしておりました。校長室においでください」などと、主催者そっちのけのメッセージがあったりして恐縮することもあります。

一度訪問した学校の先生方とは、その後も連絡を取り合うケースが多くあります。作品募集のお願いであったり、講師派遣授業のご案内であったり、逆に先生からのお願いごとに対応することもあります。それは先生が転勤になった後も続きます。お若かった先生が何年かのち、校長となられ、やがて退職した後までお付き合いが続く場合もあります。

こうした先生方とのお付き合いの一つひとつが、すなわちプラスエムの最大の財産である“プラスエムの教育関係者ネットワーク”を形作っていくのです。

(※)へき地校

へき地と云われる地域は一般に人口密度が粗で、児童・生徒数も少ないので、必然的に小規模の学校が多いです。学級編成も全校児童生徒を1学級に編成する単学級とか、2学年以上を1学級に編成する複式学級というような変則的な場合が多く見受けられます。その他の場合でもせいぜい1学年20~30名程度の1学級の単式編成が現状です。

へき地校に赴任する先生にはへき地手当が支給されます。へき地校の総数は、小学校4,123校・中学校1,783校(平成30年度)で、全国小・中学校の15%程度を占めています。

先日、都内の公立中学校でお目にかかったF先生から、最近送られてきたという各種の副教材を見せていただきました。そのほとんどが有名企業や、大手企業がたくさん加盟する業界団体が制作した立派な副教材ばかりです。テキストやワークブック、指導方法についてのDVDや指導書がセットになったものもあります。

具体的には電力会社や石油・ガスエネルギーの業界団体、家電メーカー、製紙メーカー、大手運送会社が制作して、無料で提供したもの。他に食品メーカーのものも複数目に付きました。どれもカラーで豪華な副教材であり、こうした無料の副教材が多数送られ、そして利用されることなく捨てられているという現実に正直ショックを受けました。

かつては、“無料です!”と自信満々、副教材を勝手に送りつけているケースが多くありました。しかし、最近では、そうした強引なやり方ではかえって逆効果であることがわかっていますから、勝手に送りつけるケースは減ってきているようですが、たとえ受け取っていただいても、内容を見てやはり使えないとなれば結果は同じことです。

F先生はどれにもいちおう目を通したらしく、「内容は悪くないのですが、残念ですがこのままでは使えないですよ。」というお話でした。その理由を尋ねると、「内容が高度すぎる、中学生の学習レベルに合っていない、学習のポイントが不明確」などたくさんの不満が出ました。60頁近いテキストをパラパラめくりながら、「内容は豊富ですが、使えるとしてもほんの数ページだけです」と残念そう。

プラスエムが制作をまかされる副教材でも、打合せ段階で担当者のジレンマをお聞きすることがあります。関連部署からの要望を入れざるを得ない事情があり、要望を入れるとどうしても内容が膨らみ、しかも正確に伝えるためには専門用語を入れざるを得ないというのです。その結果、対象学年のレベルを超えて、むずかしい内容になってしまうというわけです。担当者にも内容が膨らみ、その学年のレベルを超えてしまえば使ってもらえなくなるという心配はあります。

そこでプラスエムでは、そうした企業側の事情を考慮したうえで、全部使ってもらえない場合、部分的にでも使ってもらえる構成を提案しています。また、教科書以外の教材である“副教材”を活用してもらうためには、力量のある先生にご理解いただくことが早道だと考えます。そこで、できるだけそうした先生に絞って、まず見本をお送りし、じっくりご覧いただいたうえで必要部数を注文してもらうようにしています。そして、ご注文いただいた部数のみお届けするようにします。こうすれば、お金と手間ひまをかけた副教材が、むだなく使ってもらえる確率が高まります。

ここで必要となるのが、力量のある先生の情報です。プラスエムの持つ“先生方のネットワーク”がここでモノを言います。プラスエムから情報を発信できるのは、過去作品募集や講師派遣授業などでお世話になった先生が中心です。これらの先生は、校外の情報をうまく取り入れ“教材研究”(※)に利用できる技量を持つ、いわゆる“やる気のある先生”です。

プラスエムでは、まずネットワークの先生方にご案内し、自校はもちろん、歓迎してくれそうなお知り合いの先生をご紹介していただくことにしています。また、内容に関連する教科研究会の役員の先生方に協力をお願いすることもあります。このように、企業・団体から提供される良質な副教材が子どもたちの学習に役立てられるよう努力しているのです。

(※)教材研究:わかりやすい授業構成のために、教科書を補足する資料や情報を集めること。わかりやすい授業のためにとても重要な活動であり、“やる気のある先生”とは教材研究に熱心な先生と言って過言ではありません。

企業や団体が無料で学校に講師を派遣して行う「講師派遣授業」は、今では多くの学校で歓迎されています。その理由として挙げられるのは、教科書だけでは説明しきれない具体的な情報やデータを、それぞれの専門家から直接学べること、学校の予算で購入できない副教材や資料を無料で提供してもらえることなどです。子どもたちにしてみれば、ふだんの授業と違う体験ができ、刺激的な時間を過ごせることです。このような授業が受けられると、学校としては「講師派遣授業」の関係者に感謝し、同じ学年で毎年実施を希望するようになります。

しかし、必ずしもうまくいくケースばかりではありません。5年ほど前、プラスエムがコーディネーターとなって行った「講師派遣授業」で、大きな失敗をしました。都内の公立中学校で行われた授業は、製紙メーカーによる環境学習がテーマでした。本業である紙ができるまでの工程をパワーポイントや映像を使ってわかりやすく説明し、各種用紙やティッシュペーパーなどの実物を回覧しました。

企業の要望を取り入れ、学校側との調整を経て、双方了解済みの授業内容であり、参観していた校長も満足そうでした。問題が起きたのは授業が終了した直後でした。

授業の記念に製品(ティッシュペーパー)をプレゼントすることになっており、その説明に立った企業担当者が説明の中で「このティッシュペーパー(メーカー名・商品名)はどこでも売っています。ぜひ買って帰ってください」と話したのです。

プレゼントの申し出があった時、商品の特徴を説明するだけということで学校の了解を取っていましたが、「買って帰ってください」という呼びかけは担当者の逸脱行為でした。営利行為とみなされても言い訳できません。しかし、その場では何の問題にならず、先生方にも感謝されて授業が終了しました。

一般的に先生方には優しい方が多く、事情を説明すれば多少の逸脱には目をつぶってくれます。しかしここで甘えることは厳に慎まなくてはなりません。そのことで、もし教育委員会や保護者からクレームが入れば、その先生や学校は非常に困ることになります。先生との信頼関係で成り立っているプラスエムは先生を困らせるわけにいきません。先生を困らせた瞬間に、“プラスエムの教育関係者とのネットワーク”は消滅し、2度と回復は出来ないのです。

授業のあと、校長から「プラスエムさん、ちょっと残ってください」と言われました。主催者を見送ったあと校長室に戻った私は、校長から「担当の先生にも確認しましたが、約束が違うのではありませんか?」と詰め寄られました。“ぜひ買って帰ってください”と、企業の担当者が生徒に話したことを校長は憂慮していたのです。授業を受けた2年生140人の中には父親がライバルメーカーに勤める生徒がいるかもしれません。保護者の反応によっては大変な問題になりかねないのです。

この件は結局杞憂に終わり、校長はプラスエムのお詫びを受け入れてくれました。誠意を尽くした対応に逆に信頼が厚くなり、数年後に転勤した後は、その学校でプラスエムが運営する事業に協力してくれるようになりました。

問題発言の企業担当者はというと、学校関係者に感謝されたことを以て、帰社後上司に「授業は大変うまくいった」と報告したことでしょう。企業・団体が無料で行う「講師派遣授業」は、社会貢献活動としても高く評価されるものですが、ほんの少しの心得違いで、せっかくの取り組みが取り返しのつかない結果をまねくこともあります。プラスエムは、そうした経験の積み重ねの中で、常に油断することなく、コーディネーターの役割を果たしているのです。

■「総合的な学習の時間」の時間数

「総合的な学習の時間」は、小学校で2002年4月に施行された学習指導要領により創設され、小学校3.4年生は年間105単位時間、5.6年生は110単位時間が設定されました。そして、2011年4月から改定された学習指導要領により小学校3年生から6年生まで70単位時間となり、2020年4月から施行される新学習指導要領でも同じ時間数が設定されます。

※小学校1年生は「生活科」として102時間、2年生は105時間設定されています。

中学校では2003年4月に施行された学習指導要領により創設され、時間数は1年生70~100単位時間、2年生70~105単位時間、3年生70~130単位時間。そして、2012年4月から、1年生50単位時間、2年生・3年生70単位時間となり、2020年4月から施行される新学習指導要領でも同じ時間数が設定されます。

このように、2002年4月に始まった「総合的な学習の時間」は、小学校・中学校とも2012年4月から施行された学習指導要領で減らされて、今回改定される新学習指導要領に引き継がれています。これは、2002年4月に「総合的な学習の時間」が加わった際、理科や算数(数学)などの時間数が大幅に削られたことの反動が現在も続いているとも言えます。PISAなどの学力テストの結果指摘された「学力低下」対策として、理科や算数(数学)などの時間数を増やした余波を受けたと見ることも出来ます。

 

■教員の負担が大きい「総合的な学習の時間」の指導

総合的な学習の時間は、「教科横断的・総合的な学習や探究的な学習を通して,自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,よりよく問題を解決する資質や能力を育成、学び方やものの考え方を身に付け,問題の解決や探究活動に主体的,創造的,協同的に取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることができるようにする」という目的で創設され、実施されてきました。

そのため、時間だけが設定され指導内容は学校の裁量に任されることになりました。この背景には、「教科内容は学習指導要領によりがんじがらめに縛られ、特に教科を横断する学習指導ができない、もっと教員の自由に指導させて欲しい」という現場教員からの不満に応えるという側面もありました。

しかし、教科書もない、テーマも指導方法も自由という「時間」での指導は、豊富な経験と高い指導力を持つ教員でなければ十分な成果をあげることは難しいのが現実です。そのため、指導教員に負担を強いる結果になり、せっかくの「時間」を使いこなすことが出来ず、単に体験活動に終始し、「ゆとり」の時間となってしまったケースも見受けられます。

教員の負担軽減の方法として、外部の専門家を特別非常勤講師として招き講義に厚味を持たせる場合や、過去に実施された講座を受け継ぐ(自分の講座の場合は前年度の内容を繰り返す)方法を採る場合が多くなりました。

「総合的な学習の時間」の課題は、指導者が忙しく十分な準備時間がとれないため、満足のいく内容の授業を行うことができていないことです。近年、公立学校の教員に課せられる事務処理の量が激増しており、現実問題として「総合的な学習の時間」を全ての学校が有意義に活用することは極めて難しいのが実情です。

 

■学力低下論との関わり

一定数の保護者は、子どもの学力が低下した原因は教育を行う学校にあると主張しています。このような立場からは、総合的な学習の時間にも批判的な意見が唱えられ、総合的な学習の時間の方向性を考える上での混乱も生じているのが実情です。端的に言うならば、総合的な学習の時間は教科学力の向上には寄与しないので廃止すべきであるというのがこうした立場の代表的な主張です。
一方、反論として、教科学力にしか興味を示さない(テストの点数の多寡にしか興味が無い)風潮が強まっている昨今、総合的な学習の時間が担うべき役割は増しているという意見もあります。
総合的な学習の時間が具体的にどのような効果を上げるのかという問題については、以下のような議論があります。まず、肯定的な意見としては、「総合的な学習において教科で学んだことを発展させた内容を学ぶ」「総合的な学習の時間で概要を学んだ後に各教科で詳しく学ぶ」などの形態によって、さまざまな活動を有機的に結びつけることが可能であるというものです。
また、「環境教育」のように、単に知識を得るだけではなく、生活実感に基づいた個々の行動が求められる学習にこそ、総合的な学習の時間が必要とされるという考えもあります。子どもの学力は、教員や保護者の取り組み次第で向上する余地があり、「総合的な学習の時間は、教員や保護者がほんとうに子どもに必要な教育内容は何かを考える上で意義がある」という意見もあります。
一方、総合的な学習に批判的な立場からは、「教科学力は客観的評価が可能であるのに対し、総合的な学習の効果は測定不可能である。単なるお遊びの時間ではないのか」「学校・教員の違いによる効果の幅が大きすぎる」というような意見が出されています。

 

■「総合的な学習の時間」ついての私見

1975年、ヨーロッパ一人旅での体験です。ドイツ・ハイデルベルクのユースホステルで、小学生くらいの団体と泊まり合わせました。夕食後、先生の指示で、子どもたちが思い思いに旅行者の元を訪れます。私のところにも数人がやってきました。

出身国と名前を聞かれた後、「あなたの国の新聞の名前を教えてください」というのが最初の質問でした。「朝日新聞、読売新聞…」私の答えを真剣にメモします。そして次の質問と、次々に質問がでてきました。ユースホステルは様々な国の若者が利用します。先生は、ユースホステルへの宿泊を子どもたちの“学習”に利用していたのでした。おそらくドイツ以外にもヨーロッパ各国で日常行われている学習だったのでしょう。

これも「総合的な学習の時間」の一部と言えるのではないでしょうか。45年前のドイツでの体験でした。子どもたちの教育は学習指導要領に示された教科内容だけで完結するものではありません。ましてや試験のためのものではありません。

教科内容に収まりきれない学習もたくさんあります。そうした学習こそ、「総合的な学習の時間」を利用して、社会全体のバックアップのもとに行われるべきです。 「自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断する」という学習は、人間が生きて行くために必要な、思えば当たり前のことです。そうした当たり前なことを学ぶ機会である「総合的な学習の時間」はもっと大切にされるべきです。

企業・団体が行う教育支援活動は教科の時間ではなかなか活用できないのが現状です。企業・団体など学校外の機関は、良質な学習プログラムを用意して学校との連携を求めています。こうした連携の受け皿として「総合的な学習の時間」をもっと活用すべきではないでしょうか。

 

(資料)学習指導要領の中での総合的な学習の時間

時間だけが設定され指導内容は学校の裁量に任されることにより、却って指導しにくい状況であることに対応し、学習指導要領の中での「総合的な学習の時間」指導計画の作成に当たって,以下のようにある程度踏み込んだ記述がされています。

学校における全教育活動との関連の下に,目標及び内容,育てようとする資質や能力及び態度,学習活動,指導方法や指導体制,学習の評価の計画などを示すこと。地域や学校,児童の実態等に応じて,教科等の枠を超えた横断的・総合的な学習,探究的な学習,児童の興味・関心等に基づく学習など創意工夫を生かした教育活動を行うこと。各学校において定める目標及び内容については,日常生活や社会とのかかわりを重視すること。

育てようとする資質や能力及び態度については,例えば,学習方法に関すること,自分自身に関すること,他者や社会とのかかわりに関することなどの視点を踏まえること。

学習活動については,学校の実態に応じて,例えば国際理解,情報,環境,福祉・健康などの横断的・総合的な課題についての学習活動,児童の興味・関心に基づく課題についての学習活動,地域の人々の暮らし,伝統と文化など地域や学校の特色に応じた課題についての学習活動などを行うこと。

各教科,道徳,外国語活動及び特別活動で身に付けた知識や技能等を相互に関連付け,学習や生活において生かし,それらが総合的に働くようにすること。各教科,道徳,外国語活動及び特別活動の目標及び内容との違いに留意しつつ,各学校において定める目標及び内容を踏まえた適切な学習活動を行うこと。各学校における総合的な学習の時間の名称については,各学校において適切に定めること。道徳教育の目標に基づき,道徳の時間などとの関連を考慮しながら,総合的な学習の時間の特質に応じて適切な指導をすること。

また、内容の取扱いについては,次のような配慮が求められています。各学校において定める目標及び内容に基づき,児童の学習状況に応じて教師が適切な指導を行うこと。問題の解決や探究活動の過程においては,他者と協同して問題を解決しようとする学習活動や,言語により分析し,まとめたり表現したりするなどの学習活動が行われるようにすること。

自然体験やボランティア活動などの社会体験,ものづくり,生産活動などの体験活動,観察・実験,見学や調査,発表や討論などの学習活動を積極的に取り入れること。体験活動については,各学校において定める目標及び内容を踏まえ,問題の解決や探究活動の過程に適切に位置付けること。

グループ学習や異年齢集団による学習などの多様な学習形態,地域の人々の協力も得つつ全教師が一体となって指導に当たるなどの指導体制について工夫を行うこと。学校図書館の活用,他の学校との連携,公民館,図書館,博物館等の社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携,地域の教材や学習環境の積極的な活用などの工夫を行うこと。

国際理解に関する学習を行う際には,問題の解決や探究活動に取り組むことを通して,諸外国の生活や文化などを体験したり調査したりするなどの学習活動が行われるようにすること。情報に関する学習を行う際には,問題の解決や探究活動に取り組むことを通して,情報を収集・整理・発信したり,情報が日常生活や社会に与える影響を考えたりするなどの学習活動が行われるようにすること。

 

 

2017から2018年に文部科学省が告示した新学習指導要領における授業改善に向けたキーワードの一つ。学習指導要領の総則の中で「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を行うこと」が明記されている。

教師による講義中心の「受動的な授業や学習法」に対し、児童・生徒がより主体的な形で授業に参加する「能動的な授業や学習法」のことを一般的に「アクティブ・ラーニング」と呼び、中央教育審議会における検討の過程では、この用語が使われていた。

学習指導要領改訂の基本的な考え方や方向性等を示した中央教育審議会答申(2016年12月)では、「主体的・対話的で深い学び」を実現する際の視点として、以下のような記載がある。

 

  1. 学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているか。
  2. 子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める「対話的な学び」が実現できているか。
  3. 習得・活用・探究という学びの過程の中で、各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」が実現できているか。

 

全国のどの地域でも一定水準の教育を受けられるようにするため、文部科学省が策定・告示する各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準で、国立、公立、私立を問わず適用される。1947年(昭和22年)に「学習指導要領(試案)」として作成され、現在の大臣告示の形で策定されたのは1958年(昭和33年)からで、以来ほぼ10年ごとに改訂されている。告示されてから実施に至るまでには、趣旨の周知・徹底や教科書の編集・検定・採択等のステップがあり、一般的には3年程度の期間を要する。その間、円滑な移行ができるよう、指導内容を一部加える等の特例が設けられ、可能な範囲で新学習指導要領への取り組みが出来るような移行措置がとられる。

学習指導要領は、幼稚園(教育要領)、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校ごとに策定されており、教育課程編成方針等を示した総則と、各教科等の目標と大まかな教育内容等で構成されている。さらに、教科等ごとに「学習指導要領解説」が作成されおり、教科書編集や授業を行う際の指導案作成等の参考として活用される。

現行の学習指導要領は2008年から2009年に告示され、小学校は2011年度から、中学校は2012年度から、高等学校は2013年度から実施されている。2017から2018年に新しい学習指導要領が告示され、小学校は2020年度から、中学校は2021年度から、高等学校は2022年度から実施されることになる。学習指導要領、学習指導要領解説とも政府刊行物センターや大型書店等で購入が可能。

学習指導要領イメージ

例えば、コンクール・コンテストの実施に当たって、教科研究会組織(注)の後援名義をいただくことはそれほど難しいことではありません。教育的な内容であり、必要な条件を満たして申請すれば前向きに検討してくれます。しかし、後援名義をもらったからといって必ずしも運営に協力してくれるわけではありません。講師派遣授業でもそれは同じです。

しかし、プラスエムが運営するコンテストでは、いちばんの課題である作品募集にも協力していただくことがあります。講師派遣授業の計画で、実施希望校が少ない場合、実施してくれそうな学校(校長)を紹介していただくこともあります。

プラスエムは、教科研究会の会長、副会長など有力な役員の先生と個人的なつながりを持っているからです。役員の先生はほとんどが校長先生ですが、かつては事務局でバリバリ活躍していた先生方です。

そうした先生が、やがて校長になられて役員に就任し、校長退任と同時に研究会の顧問となり、いつまでも影響力を持ち続けます。

プラスエム社長の長岡は、プラスエム設立以前勤務していた教育出版社旺文社の時代から、長年にわたって、先生方と個人的な信頼関係を築いてきました。当時お若かった先生が、やがて校長になられて、教科研究会の役員に就任している親しい先生もたくさんおられます。

企業や団体から相談される案件では、このような幅広い立場の先生方のうち、最も適切と思われる先生に相談を持ちかけます。そうした先生方とのパイプが即ち“プラスエムの教員ネットワーク”の正体です。教員ネットワークの先生には、教科研究会以外の方ももちろんおられます。

3年ほど前、北海道苫小牧市の小学校で環境をテーマにした講師派遣授業を実施したいという依頼がありました。プラスエムと言え、苫小牧市の小学校に親しい先生がいるわけではありません。そこで、北海道小学校校長会会長を東京の全国本部でご紹介いただき、会長先生のルートで苫小牧市の小学校・教育委員会にたどり着きました。

こうしたルートをたどることはプラスエムの案件では珍しいことではありません。企業の担当者がいきなり連絡してもまず相手にされませんが、責任ある立場の先生からの紹介があれば、決して無碍に断られることはありません。先生方のルートも強いきずなで結ばれているからです。

その代わり、協力してくれた先生が、万が一困るような事態を引き起こせば、プラスエムは二度と協力を得ることが出来なくなります。教員ネットワークは限りなく強力であり、無限大の力を秘めていますが、子どもたちの教育に責任を持つ先生方のネットワークですから、安易な依頼は出来ないということです。教育出版社旺文社の時代から、40年以上に渡って築いてきた信頼関係が今でも維持できているということは、そうした事態を引き起こしたことが一度もないということでもあります。

また、プラスエムの教員ネットワークは作ろうとして作ったものではありません。長い年月を経て、自然にでき上がったものです。その間、一方的にお世話になる関係ではなく、先生方の困りごとにはできる限り相談に乗りました。だから、先細りすることなくいつまでもよい関係でいられるのだと思います。

(注)教科研究会(「プラスエムが連携できる団体」参照)

理科や社会科などの教科ごとに専門の先生方が組織する研究会です。教科ごとに小学校・中学校・高校別に分かれており、全国組織から都道府県・市町村レベルでも存在する場合があります。授業技術の研さんを目的とし、全国大会を開催して先生同士の情報交換の場を提供するなどの活動をしています。