教育のICT化やコロナ禍における学校の現状に関するアンケート調査(2021年2月)

<アンケートの目的>
NPO法人エコテクみらい研究所とプラスエムでは、2021年1月下旬から2月下旬にかけて、「教育のICT化やコロナ禍における学校の現状に関するアンケート調査」を実施いたしました。この調査は、急速に進む学校ICT化やコロナ禍において学校の現状はどのようになっているのか、日々子どもたちと向き合う先生方は現在の状況をどのように感じておられるのか、その本音をお聞きして企業や団体が行う学校への支援活動に反映させることを目的に実施したものです。

<調査の概要>
○調査対象   全国の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校の教員
○調査方法   全国の小学校・中学校・高等学校・特別支援学校のうち、無作為に抽出した3000校にアンケート用紙を郵送、またはメール送信。回収はFAXまたはメール。
○調査期間   2021年1月末~2月末
○回答者数   254名(回収率約8.5%)
○調査実施   特定非営利活動法人エコテクみらい研究所、プラスエム

【特記】調査は無記名を原則としたが、回答者の87%(221人)が校名・氏名を記載。
*アンケート調査票はこちら(PDF)教員アンケート調査票

*アンケート調査結果はこちらからご覧いただけます。(PDF)

教育のICT化やコロナ禍における学校の現状に関するアンケート詳細調査結果

 


<調査結果>

※「すべて複数回答可」としました。

Q1.回答者の学校区分と職位
全体の回答数は254件で、校種別では小学校71校、中学校105校、高校68校、特別支援学校他10校。
回答者の職位は、「副校長・教頭」(95人)、が最も多く、以下、「教諭」(85人)、「主幹教諭」(65人)等。

【特記】
通常学校を対象としたアンケートでは、「教諭」「主幹教諭」が主な回答者となりますが、本件に限っては「副校長・教頭」が最も多く回答を寄せてくれました。このことから、「主幹教諭」も含め(160人64%)、管理職による学校全体としての、より信頼性の高い回答をいただくことができたと判断します。


Q2.昨年は新型コロナ感染拡大により休校の時期があり、その後も感染防止対策に追われ大変なご苦労があったと思います。具体的にどのような影響があったでしょうか。

「夏冬の休みが短くなった(209校、82%)」が最も多く、続いて「運動会などの学校行事が中止になった(187校、74%)」、「教員の負荷が増えた(166校、65%)」の順でした。ちなみに「あまり影響はなかった」という回答はゼロでした。

【特記】
選択肢は多岐に渡りますが、どの回答にも共通するのは先生方の負荷が大きかったことではないかと考えられます。「その他」の記述に、「ICTに詳しい教員に負担が集中した」という回答がありますが、「教員の負荷が増えた」の65%には、自分自身のこととしては回答しにくい方の姿が見え隠れします。


Q3.コロナ禍による困難を抱えた学校教育の中で、企業団体が支援させていただくとしたらどのようなことを希望されますか?

「リモートで活用できる教材提供(190校、75%)」、「リモートでの施設(職場)見学または動画の提供(122校、48%)」、「リモートでの講師派遣授業(119校、46%)」となっていました。「リモートではなく実際の講師派遣や施設(職場)見学など(99校、39%)」、「作品募集など学習成果発表の場(92校、36%)」がその後に続いています。

【特記】
企業団体に対するニーズとして、リモートを前提とした教材(動画も含む)提供を求める意見が多い一方、リモートではなく実際の講師派遣や施設(職場)見学なども求めています。コロナ禍により、ある程度長期に渡りリモートでの学習を覚悟するものの、先生方はやはり教育の基本である対面での学習を希望しているようです。プラスエムに関わりのある講師派遣授業への関心の高さにも注目しました。


Q4.文部科学省が推進するGIGAスクール構想の中で、1人1台端末の普及が始まっています。先生ご自身のお考えをお聞かせください。1人1台端末を具体的にどのように活用できるとお考えですか?

「授業の中で」の活用が(235校、93%)は当然として、「自宅に持ち帰らせる」が(201校、79%)もありました。この設問では、まず1人1台端末を「授業の中だけでの活用」に限るのか「自宅に持ち帰らせる」のかを問いました。端末の活用方法として、自宅に持ち帰らせるかどうかで活用の範囲が大きく違ってくるからです。

【特記】
さまざまなリスクが予想されるにもかかわらず「自宅に持ち帰らせる」が(201校、79%)だったことは注目に値すると思います。具体的な活用例も大変たくさん寄せられました。
例えば、授業の中での活用では、「タブレットを活用して意見交換が容易になり、児童が考える力を伸ばす学習ができる(小学校)」、「机を離しているので板書が見えにくい。タブレットなどでそれをカバーする(中学校)」、「意見発表や集約。確認テストの採点や集計。提出物等で時間を取られなくなる(高校)」、「障害のある子に合わせた形での教材・映像等の提示(特別支援)」などです。
また、自宅に持ち帰らせる場合、「宿題のプリント代わりに(多数)」。「休校になった場合、リモートでの授業参加(小学校)」など、たくさんの活用例のほか、「学校管理の場合、破損・紛失があった時に責任がとれないので持ち帰らせるのは難しい(中学校)」、「紛失・故障の恐れがあるため難しい(高校)」のように、課題を指摘する声もありました。課題はあるでしょうが、それを乗り越えて学習の可能性を広げていきたいというご意見も多数ありました。
※Q4のさまざまな活用例は「詳細調査結果」にまとめています。


Q5. 1人1台端末の活用について、企業団体が支援させていただくとしたらどのようなことを希望されますか?

「学習コンテンツの提供(223校、88%)」「活用方法がわかる資料の提供(160校、63%)」「授業に使える企業サイト情報の提供(127校、50%)」と続きます。「講師派遣(リモート含む)による授業」は(115校、45%)でした。

【特記】
Q3では、コロナ禍の困難な状況での企業団体に対する要望をお聞きしましたが、Q5では1人1台端末の活用についてはどうなのかお聞きしました。その結果、活用方法がわかる資料、授業に使える企業サイト情報などの提供を求めていることが分かり、プラスエムの事業でもある講師派遣などへのニーズが高いことも、Q3と似た結果となりました。


Q6. デジタル教科書やICT機器を活用した授業の促進も大きな関心となっています。 ICT機器の活用についてお聞かせください。どのようなICT機器を活用していますか?

「パソコン」「プロジェクター」「無線LAN」「電子黒板」と続きますが、この設問では、学校の備品として何が準備されているかではなく、何を活用しているのかをお聞きしたものです。選択肢になかった「webカメラ」「書画カメラ」など多彩な機器を使いこなしていることが分かりました。

【特記】
学校にはすでに多彩な機器が準備され、先生方がそれを使いこなしているという状況が分かりました。ただ、それが実態として一部の先生に限られていないか気にかかります。プラスエムが講師派遣授業などで関わる多くの学校でそのようなケースが多々あるからです。
※Q6のICT機器を活用の実態についても「詳細調査結果」の記述からうかがえます。


Q7. ICT機器を具体的にどのように活用していますか?

Q4では1人1台端末を具体的にどのように活用しているかの質問でしたが、Q7ではICT機器を具体的にどのように活用しているか?「授業での補助教材として」または「授業以外の学校行事」に分けて質問しました。その結果、「授業での補助教材として」が(235校、93%)とほとんどの学校が、また「授業以外の学校行事」でも(189校、74%)となりました。さらにそれぞれの場合、具体的に事例を挙げていただきました。

【特記】
ICT機器を具体的にどのように活用しているかの非常にたくさんの具体例を挙げていただきました。主なものとして、授業での補助教材では、「毎時間全クラスで教師間デジタル教科書をプロジェクター提示(小学校)」、「普通教室に1台の電子黒板があるので、パソコンとリンクさせて使っています(中学校)」、「板書代わりに授業内容をプロジェクターで投影。パソコンの画像データをテレビモニターに映すなど(高校)」でした。
また、授業以外の学校行事では「オンライン全校集会、オンライン懇談会。お別れ集会のプレゼン(小学校)」、「パワーポイントでの文化祭発表、保護者向け運動会のリアルタイム配信(中学校)」、「寒い時期の学年集会や、始業式・卒業式等の全校集会(高校))などがありました。

※Q7のさまざまな活用例は「詳細調査結果」にまとめています。


Q8.企業団体がICT機器や教材の活用について支援させていただくとしたらどのようなことを希望されますか?

Q5では、1人1台端末の活用について、企業団体にどのような支援を希望するかお聞きしましたが、Q8ではICT機器や教材の活用についての支援に関する質問です。
「授業に役立つソフトの提供(208校、82%)」、「活用事例集の提供(170校、67%)」、「アドバイザー・授業サポート要員の派遣(127校、50%)」と続きます。

【特記】
企業団体が提供できるソフトや最新情報、またはサポート要員の派遣などが求められています。特に、国からの十分な支援が受けられない分野で、企業団体に対する期待感が大きいことがうかがわれます。


Q9.自由記述
【特記】
「ICTを使いこなすことができれば、子どもたちの学びの質を高められるものもあると思います。新しい機器がどんどん増えることにもちろん不安はありますが、子どもとともに学んでいきたいです(小学校)」、「セキュリティ面、ネットワークの強化など課題が山積みですが、やりながら解決していくしかありません。専門家のノウハウがあれば、解決することも多いと感じています(中学校)」、「教育現場もそうですが、様々な分野においてコロナ禍をいかにして乗り越えるか模索中です。多くの知恵を出し合い、新しい対処の方法を探究していきましょう(高校)」など、むずかしい問題を抱えながらも前向きにとらえている先生方のご意見をたくさん拝見しました。
※Q9「自由記述」にある先生方のナマの声すべてを「詳細調査結果」にまとめました。

 


< 総 括 >

プラスエムが実施する調査では、ふだんからプラスエムと関わりの深い先生方(ネットワークの先生方)を対象としていましたが、今回は全国から無作為に抽出した学校を対象としました。その結果、より学校全体の実態を反映した回答が得られたものと思います。

学校現場は大きな変革期にあります。特に小学校では、新学習指導要領の中で高学年での英語の教科化、プログラミングやアクティブ・ラーニングが取り入れられたことです。また、35人学級への移行により新たに教職員1万人以上を確保する必要があります。

さらに、新型コロナウイルス感染拡大によってもたらされたさまざまな困難。そこに、デジタル教科書やICT教材を活用した授業の促進という変革の波がやってきたわけです。
そんな中、特定非営利活動法人エコテクみらい研究所とプラスエムが行った「教育のICT化やコロナ禍における学校の現状について」のアンケート調査では、困難な時期、お忙しい校務の中でもさまざまな課題と真摯に向き合う先生方の姿を拝見しました。

アンケート調査は無記名での協力をお願いしましたが、なんと87%もの回答者が学校名・氏名を記入してくれたことは何を意味するのか。それは企業団体に対する教育支援への期待度の大きさではないかと思います。ソフトや情報の提供、サポート要員の派遣など、国からの十分な支援が受けられない分野で、企業団体に対する期待感が大きいことが改めて浮き彫りとなりました。

教育支援活動については、教育コーディネーターのニーズがますます大きくなっています。これは、文部科学省・教育委員会でも喫緊の課題となっている「教員の労働時間の短縮」に関わりがあります。先生方の働き過ぎは今や“社会問題”とも言えますが、企業団体の教育支援が、それを助長することがあってはなりません。
そのためにこそ、先生方の負担軽減に寄与する教育コーディネーターの役割がますます重要となります。この調査結果を分析し、また機会あるごとに現場の先生方のご意見をお聞きしながら、教育支援を計画する企業団体のお手伝いができればと考えます。

最後に、アンケート調査にご協力いただいた先生方に深く感謝を申し上げるとともに、心より敬意を表します。

(文責:プラスエム 長岡 稔)

*アンケート調査結果はこちらからご覧いただけます。(PDF)

教育のICT化やコロナ禍における学校の現状に関するアンケート詳細調査結果


 


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