PTAと“おやじの会”

校長室の壁に必ず飾られているのが歴代校長の写真です。現在の学校制度の基本は明治政府によって作られましたので、明治初年の創立から150年くらいの歴史を持つ学校も少なくありません。その場合、カイゼル髭の初代校長から何十人もの写真が飾られている学校もあるかもしれません。

そんな歴代校長の写真とともに飾られているのがPTA会長の写真です。PTAは戦後作られた組織で、長くて70年程度。写真も多くて30枚程度でしょうか。

PTAの役割は、児童・生徒の親と教員が協力して教育効果の向上をはかること。戦後GHQの指導のもとに各学校におかれました。全国的組織として「日本 PTA全国協議会」 と「全国高等学校 PTA協議会」が結成されて、現在に至っています。

子どもが入学すると、保護者の間から役員の選出が行われます。子どもを持つ親なら誰でも経験があると思いますが、役員の選出に当たって一苦労があります。仕事を持つ父親に代わって、たいてい母親が対象になりますが、誰もが敬遠するからです。

特に現代では、仕事を持つ母親が普通であり、仮に役員に選出されたとしても、満足に役割を果たせないというケースも多いようです。なり手がなく、くじ引きで決めるという学校もあるほどで、貧乏くじを引いた人に十分な活動ができるわけもありません。

そこに登場したのが“おやじの会”です。“おやじの会”は活動が下火になっているPTAの受け皿として登場し、特に子どもたちの“安全面での見守り隊”“学校行事でのサポーター”として自然発生的に、全国各地の学校に拡がっていきました。

やがて、特に小学校においてなくてはならない存在として、2004年、全国組織「おやじ日本」が結成されました。結成大会に出席した私の会員番号は№00100です。結成の中心となったのは、元東京都副知事の竹花豊氏。元警察官僚だった竹花氏は、子どもたちの健全育成に熱い思いを抱く方で、私はその創立スピーチに感動しました。

その後「おやじ日本」は、公益の増進に資するものであるとして、特定非営利活動法人の認定を受け、各地のおやじの会を支援しています。また、子どもに関する情報提供や様々な活動を通して、子どもたちの健やかな成長に貢献しています。

さらに、平成24年から「未来教室」を学校に届ける活動にも力を入れています。毎年50ほどの小・中学校に、様々な業種の企業で働く若者を派遣し、出前授業を行うのです。学校の先生では話せない社会の現実、その面白さや苦労などを子どもたちに聞いてもらうことがねらいです。

子どもたちの教育は学校だけに任せておいてよいものではありません。家族をはじめ地域社会が寄ってたかって応援することは当たり前です。その意味で、自然発生的に生れた「おやじの会」は、今後ますます存在感を増すでしょう。校長室の壁に歴代校長の写真とともに、「おやじの会」会長の写真が飾られる日もそう遠くないかもしれません。

 

 


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